いつか剣は、しゃもじに変わっていく

単に、冷めたからってのもあるけど。

でもやっぱり、私は丸くなったと思う。

鋭利な棘は、抜けたり柔らかくなったり、攻撃性を持たなくなった。

一時期の私は、完全に昔の安西先生(ホワイトヘアードデビル)状態だったけど。

昔の私しか知らない人は、この期間の激昂・激情っぷりは理解不能だろうな。

「シズクって男は、やる気がなく、言うことも言わず、怒りもしない」

多分、そんな認識だろう。

今は上がる所まで上がってまた落ちたので、表面的には以前の私と変わらず、昔の奴らと再会しても「お前って、ほんと変わらないよなぁ」って言われる訳で。

でもまぁ、今の私が最善だと思う。

感情は、常に中立に置いておける。

無理な時もあるけど、基本的には柔和な自分でいられる。

「諦めた」訳じゃない、「許せる」ようになっただけ。

人を力で捻じ伏せて、自分のコントロール下に置こうとしても、どこかで破綻する・・・恐怖政治は表面的には上手くいっても、心はどんどん離れていく。

人ってのは、本当に感情の生き物で。

縛り付けようとすればする程に、距離が出来て埋まらない溝となる。

だから自然に無理なく、掌握しようと力まない。

結果的に人の心を掴むのは、ただ純粋にその人の魅力なんだと思った。

別に媚を売って、好かれる自分を演じろって訳じゃないけど。

何か最近は、よく解るんだ。

最善を勝ち取る為に、自分が嫌われ役になってもいいって思ってたけど。

それは間違いだった。

最も効率が悪く、最も精神に負担のかかる、愚かな選択だった。

人に嫌われてもいいからって前提は、もう止める。

今なら無理なんかしなくても、私は好かれる自分になれるんだ。

好かれる人には、人が付いて来る。

自分と人の間に、壁が存在している訳じゃなくて。

それはただ、自分の意識が作り上げた幻想に過ぎないのだから。

心と心を隔てる壁がなければ、この先どこへ行っても笑っていられる。