2017年、秋、東京

時の流れは速く、もうすぐ30なのだけれど・・・。

今さらこれ以上に悪いことが起きたからって、殊更に心が揺れたりはしない。

今回はなまじ良いこと過ぎて情緒不安定になった感はある。というかそれしかない。

苦労すればするほど人の優しさは身に染みるもので、優しくされればされるほど、思い知るのは自分の無能さばかり。苛立つのはただ自分の無能さに対してのみで、将来有望才能人は遥か雲の上。天に唾をすれば、それは自分に戻ってくるだけ。他人をうらやむ怒りなど虚しいだけだ。

私の持っている才能はどれもこれも浮世離れしたものばかりで金にはならず、ビジネスでは何一つ役に立つことなどない。寧ろない方がマシだったのではないかとさえ思う。

確かに人は何か一つくらいは才能というギフトを持って生まれてくるものだし、才能は途中で生まれない。才能はあくまでも最初から種としてあるもので、環境や趣味嗜好によって開花したりしなかったりやたらに時間が掛かったりする。

自分は一体、何のために生まれてきたのか。自分の天命とは何なのか。今をもって解らず、今後も解らないのだろう。

久々に美しい人と出会い、また死にたくなった。美しいものを見ると死にたくなる。自分が塵以下の存在に思えるからだ。

一目見ただけで他の人とは違う何かを感じ、一緒に行動して好意は膨らみ、二人だけで話せば旧知の仲のように自然と会話がはずむ。もっと話したい。もっと知りたい。出来れば触れたい。出来れば抱きしめたい。だが、今後特別なことが起きなければ二度と会うことはないのだろう。

あの人は運命の人だったのかも知れないが、いつも恋愛が私に苦しみしか与えてこなかったように、今回もただ心が揺さぶられて終わりなのだろう。

私はただ、先に進むことしか出来ない。

どこにも戻れない。

魂の行方が知りたい。

どこへ行けばいいのか。

誰を信じればいいのか。

何もない虚空に向かって、私はいつまでも問い続けた。