底が知れない

あの子を見て恐怖を感じることの一つは、器の大きさが計りきれない、器の底がどこまで続くのか見当もつかない、ということもある。

初めて人と接して、その人に厚みを感じた。心の底から、この人は厚みのある人間なんだなと思った。

少女感もただ年が若いだけじゃない。そんな普通の若い女の子は世の中にいくらでもいる。この子には純粋さが消えずに残っていると思った。この魑魅魍魎が跋扈する世界に生まれ、殺伐とした社会に暮らし、決して好条件で楽な仕事をしている訳ではないのに、なぜこんなにも美しい心を保っていられるのかと、にわかには信じがたい思いに駆られる。この人が持っている純粋さがどれほど貴重なものであるか。誰だって最初は美しい目をした天使同然の純粋さを持って生まれるのだ。けれどいつかは消えてしまう。失いたくないと思っても、日々を強く生きねばならないという現実を前に、いつか手から零れ落ちてしまうのだ。そして、二度と戻ってくることはない。

一体、どういう風に育ってきて、どういう想いの中で生きてきたら、こういう人間が出来上がるというのか。おそらく、並々ならぬ人生がそこにはあったのではないか。そうでないのなら、あの若さであそこまでの人格が形成されるとは思えない。美しい心を持つ人ほど、苦労の絶えない世界だ。運良くトントン拍子の人生をただスキップするように生きてきた人が、あんな空気感を纏える訳がない。

こんな人が世の中に実在するとは思わなかった。