玉手箱

今、思えば。あれは現実の出来事だったのか。あんな人は本当に存在したのか。本当に言葉を交わしあったのか。同じ時を共有しあったのか。

真実という玉手箱をあけてしまえば、夢から覚めてしまう気がする。いや、それでいいのか。

これ以上、現実がなんなのか解らなくなるよりは、その方がいっそ。

だが、真実を確かめる方法はないのだ。

この先もまた、まどろみの中を生き続けることになる。

どこにも辿り着けない泥沼の中を進み続けることになる。