卑怯な人間

俺は若菜と再会しても。

短く話してすぐに失礼しますと言って立ち去ると思う。

向こうから呼び止められなければそこで終わり。

連絡先を交換しましょうって向こうから言われなければ終わり。

卑怯な人間だ。

けれども、結婚もできないのに付き合う訳にはいかないだろう。

向こうになんらかの意思がなければ。

俺たちはもう、何も考えなくてもいい10代ではないのです。

子供ではないのです。

だから、あなたが決めてください。

俺に決定権はない。

いつも目を見つめられずに最後を迎えた。

自信がないのです。

あなたを幸せにする自信がないのです。

俺が幸せになる自信はある。

俺だけが得をする。

それじゃ不公平でしょう。

だから、短く話をして、さようなら。

その短い話に一生分の気持ちが詰まっているから。

どうか解ってほしい。

もう、次はないのだと。