あなたと冬の海を歩きたい。
そう言ってくれた人もいた。
夏じゃない。
冬の海というのがいいですね。
海に入る訳じゃない。
海は眺めるだけ。
冬の風に吹かれながら、ゆっくりと浜辺を歩く。
当てもなく、目的もなく、ただ静かに歩を進める。
ポケットに手を突っ込んで。
この浜辺はどこにも繋がっていない。
わたしたちの将来のように。
寄せる波は思いを伝える。
返す波は思いを連れていく。
冬の寒さに凍えながら。
それでも海が見たかった。
誰もいない浜辺を独占して。
世界に二人しかいないような気分になる。
わたしたちはどこへいくの。
冬の寒さに震えながら、何も考えられない。
行き止まりに立つ二人は。
海の果てのどこかを思いながら。
ふと空を見上げていた。
快晴の空。
それで全部いいような気がする。
この青の青がいつでも海の代わりになってくれる。
淋しい時は空を見上げて。
冬の海を思い出す。