入廛垂手

禅の“十牛図”は今まで生きてきて、最も感銘を受けた。

自己探求の流れを十枚の絵で表している訳だが、これが実に素晴らしい。

何に衝撃を受けたかといって、最後の入廛垂手(にってんすいしゅ)の絵が他者を救っているということだ。

自己探求と他者を救うことは、全く別の次元であると考えていた私にとって、これは本当に目から鱗が落ちた。

ぶらりと街へ出て人と語らい楽しませ、本人も全くの無自覚に人を諭し導く。これはもう究極だ。

山奥に隠遁した仙人は二流なのだな。街で人と語らい交わることの重要性を忘れている。

人生における指標ができた。それを目指して生きていく。