1/8m.m.

安部公房の『砂の女』を読了。

あまりにも深い。中学の時にも一度読んだが、当時何割理解できたのか。

強制的に閉じ込められ、死ぬまで労働を課せられる主人公。

“労働を越える道は、労働を通じて以外にはありません。労働自体に価値があるのではなく、労働によって、労働をのりこえる……その自己否定のエネルギーこそ、真の労働の価値なのです”というのが生きることの根幹であり、ある意味で真理だと思う。生の持続が生命体の生きる意味であり、その他はオマケでしかない。

では、生きることは無価値か?ということになる。労働の無限の反復以外に何があるのか、と。

脱出計画を試みるも失敗し、その果てに辿り着いたのが“罰がなければ、逃げるたのしみもない”ということ。どんな極限状態におかれてさえ、現状を楽しもうとする思考に至る主人公。

何となく生きている“日常”という名の皮をむき続けていけば、中身なんて何も無い。どうやら生きていることの価値は、“楽しむ”ということにあるのではないかと思うのだ。

だから笑って暮らそう、死ぬ時まで。