詩でも書きましょうか〜その9

飛翔

窓から紙ひこうきを飛ばしては 力尽きて落ちる様を眺めている
庭には飛べなくなった紙ひこうきが山のように
今度こそは長く長くと思うけど 空を舞うのは ほんの一瞬 
それはまるで命の儚さを象徴しているかのようで

遥か昔 この空を自由に飛ぼうと願った人の想いは 確かに叶えられ 
この空にひこうき雲が足跡を残した

空を羽ばたける翼をくれると言っても きっと僕はそれを断るだろう
まだ地上でやり残したことが多いから
飛ぶことを止めた あの鳥のように 自分だけのやり方で生きていこう
手段は十人十色 飛ばない生き方もある

庭に咲くひまわりに水をやっては 高く高く太陽まで伸びろと願う
僕の身長を超えた背の高いひまわり
叶わぬ願いを何かに託しては 己の非力を忘れ
太陽を目指せる時期は わずか一瞬 それはどこか青春の淡さのようで

昔と変わらない夏の夕暮れ 風鈴の音がどこかで鳴って 
涼しげな風が縁側でまどろむ僕に届く

どんな願いでも叶えてあげると言われても たぶん僕はそれを断るだろう
きっともう努力することを忘れてしまう
すべての願いが叶ってしまった人は 次に何処を目指して歩けばいいのか
生涯叶わぬ夢だけ背負って そっと微笑みたい

この大空を思うがままに飛びまわる空想は 希望のように今もこの胸に
時が来れば 否応なく僕らは空に還る
地上に立っていられる時間は限られていて その時は刻々と近づいてくる
飛翔する夢を抱いて 今日も駆けていくよ