あの夢の中の光景は、僕の心を映していた。
心の海に浮かぶ、少年時代の自分と、現在の自分。
ぷかぷかと、暗い海の上で頼りなく浮いている。
過去と未来を分け合った板きれを境にして。
僕はかつての自分を見捨てようとした。
悲しい過去を無かったことにしようとした。
かつての自分を連れて、岸辺まで泳いでいく強さ。それが僕にはなかった。
過酷な最善を、迷うことなく選び取る強さがなかった。
僕は彼女の頬にふれてみる。
彼女が持つ広い心の海を、僕は泳いでいけるだろうか。
深い記憶の底で待つ、悲しい目をした少女の手を取って。