欲しいものは、山程あった。
あり過ぎて、端から古びていく。
やがて記憶の中で朽ち果てて、終いには塵芥のような残骸となる。
別に大半のものは、最早どうでも良くなった。
時が流れて、欲しかったものさえ忘れていく訳で。
欲しいと思い込んでいただけで、本当は欲しくなかったものだってある。
願いが叶えば叶う程、面倒なことに巻き込まれていくことを、私は少なからず感じ取っていて、深層心理では叶うことを警戒し、叶わないことを寧ろ望んでいたのかも知れないな。
精神の安寧だけを、ただひたすら望んでいた。
誰をも必要としない、誰からも必要とされない、空気のような人物像。
他者と関わらなければ、精神は安寧を保持し続ける。
――――だからそう、いつの間にかこんな詰まらない人間になって。
羨望鏡を覗き込まない為の言い訳を、馬鹿みたいに考え続ける訳だ。
――――本当の本当は欲しかったけど、もう要りません。興味もないし。
・・・。
他の誰かに、どうして欲しいかじゃないだろう。
肝心なのは、私がどうしたいかだろう。
他人が起点となって始まれば、他人のせいに出来るもんな。
自分から能動的にアクションを起こさなければ、無駄に傷付くこともない。
要点を掏り替えて保身に徹するの、いい加減に止めれば?