何もかも、零れ落ちる

握り締めるから失うんだ。

何一つ握り締めなければ、何も失うことはない。

そして、何も得るものはない。

初めから得ない方がいいか、得た上で失う方がいいか。

いずれにせよ得るとは、失うことと同義なのだ。

それを承服した上で、人は何かを得ようとする。

どれだけ言い聞かせても、失う時に涙するのが人情。

何もかもが掌から零れ落ち、涙もまた同じだけ零れ落ちる。