立ち止まっても、時間までは止まってくれない

好きだったミュージシャンの新譜も、いつの間にかただの暇潰しになって。

好きだった作家の作品も、いつの間にかただの時間潰しになって。

音はただのノイズとなって流れていき、文章は意味を持たない文字列として通りすぎていく。

良くも悪くも自分は変わり続けていくし、以前の感性・思考を保ち続けることは不可能。

自分という人間はこの宇宙にたった一人なだけではなく、毎秒瞬間ごとに変わっていくような曖昧な存在であって、本当の自分なんてどこにもいない。

握り締めようとすれば零れ落ちるような、儚い砂の一粒に過ぎない。

掌から落ちていった過去の自分は、二度とは返って来ない。

僕らには戻る場所も、帰る場所もない。

先に進むという選択肢しかない。