バースデイ・ガール

村上春樹の『めくらやなぎと眠る女』を読了。

海外向けペーパーバックの短編集。その日本語版。

村上春樹の短編強化月間(?)ということでね、読みさしのこちらを最後まで読み切りました。実に500ページもありました(笑)短編がギッシリ詰まった本。さすがにくたびれた(笑)

バースデイ・ガールが一番、次が人喰い猫って感じかな。どちらも普通の短編集には入っていないレアものです。全作踏破には避けて通れない2作です。でも完全未収録の作品も存在するので、99%でぜんぶ埋まり切らない感じが終盤になるほどイライラするね。ここまで来たのに、全集にさえ入っていないものがあるのか!ってなる。憤るよなそりゃ。『街と、その不確かな壁』とか一生読めないんだろうな。

やっぱりバースデイ・ガールみたいな雰囲気に全振りですっと始まってすっと終わるような短編が好きですね。まぁ、長めの奴はそれはそれで悪くないんだけど。その部分いらなくね?って思うことも多々。長編はこちらも長いもんだと思って読むから気にならないんだけど、短編はサクサクッと読みたいから変に長いとダレる。この長短が非常に難しいところです。自分も若い頃は短編小説を書いていたから解る。どこまでを説明して、どこからが不要なくだりなのかを見極める。慎重に削って削って木彫りの人形を彫りあげるようなもんだ。

この本はなんと、別の短編集、東京奇譚集がまるごと(!)後半に入ってます。という訳で東京奇譚集の話もしようか。東京奇譚集って言ってんのに、ハナレイ・ベイだけ外国の話なのはどうなのって思うけど、それは野暮なツッコミなのかな。「ビーズの曲とか知ってます?」に対して「知らないよ、そんなもん」って会話文が辛辣すぎて笑った。村上春樹は日本の音楽はスガシカオしか真っ当に評価してないもんな。お互いがお互いのファンらしい。日本文学も精々、夏目漱石ぐらいだもんな好きだって言ってんの。ほとんどが海外のもんに影響を受けてんだから、作品が海外で受けるのも頷けるってもんだ。

東京奇譚集では品川猿が好き。かえるくんみたいな正体不明の訳わからん奴が出てくるのが好き。あくまでも、猿。あくまでも、かえる。でも君たちはどういう存在なんだ?という。こういうストーリー、こういうテイストについてこられるかどうかで、村上春樹作品のふるいにかけられる。ふるいに残ったが最後、あとはもう村上春樹の虜です。