ぜんぶ失ってどこへゆく

いったい、どこへ。

これ以上、失うものなど持っていない。

いったい、どこへゆけばいいのか。

失い続けた人生。

損ない続けた人生。

それでもなお、抗い続けた人生。

大事なものを、一つまた一つと失い続けて。

気がつけば、虚無感だけを握りしめて生きるようになっていた。

苦しみ。

悲しみ。

怒り。

嫉み。

感情の荒波が、精神を食らい尽くす。

崩落寸前の肉体を支えているのは、磨耗し消耗し、今にもすり切れそうな矜持。

つまらない我執にしがみついて、なおも生きようとする。なおも生きようとした。

灯火は消えていく。

消灯の時間がくる。

精神の限界まで闇に覆い尽くされ、考えることをやめる。

人間の形をした抜け殻になる。

そうして最後まで残ったのは、魂だけ。

誰も知らない、魂のゆくえ。