詩でも書きましょうか〜その11

救いの無い歌

私生活から社会生活への切り替え 僕は音楽プレイヤーのスイッチを入れる
最高値に近い音量で 救いの無い歌を聴く 満員電車に揺られるいつもの朝
踏みにじられた夢のいくつかは まるで嫌味の様に視界に映り込む
叶えられる願いばかりじゃないさ 情熱は静かに消えていった

波打つ邪悪 僕もその一部 同じ穴のムジナだって最近になって気付いた

“皆と居るのは苦しいかい?一人ぼっちは淋しいかい?”
救いの無い歌は 僕に問う
“孤独からは逃れられるよ?しがらみからは逃れられるよ?”
今日も答えは出せぬまま 時は流れ

遠い昔の話 未来には希望があった それはまだ何も知らぬ幼き頃
少しずつ真相を知り 希望は絶望に変わる 慣れてしまえばそれが普通の日々
失われてしまった純粋を すれ違う幼子の瞳に見る
一つ知るごとに 持ってるものを一つ失って 純度は損なわれていった

あの頃の敵 僕もその一人 信念の無い大人だって最近になって気付いた

“人に優しく出来ないかい?人に優しくされたいかい?”
救いの無い歌は 僕に問う
“見返りは無いかもしれないね?自分だけが労せず楽したいよね?”
与えぬ者は与えられず 手は空のまま

“意味を考えるのを止めよう そう、意味なんて無い 僕等には何も無い 初めから何も これからもずっと”

満員の電車を見送って しばしホームに立ち尽くす
人は足早に 僕の横を通り過ぎていく
世界中でたった一人 僕だけが過去に取り残されているかのような・・・
意識を日常へ戻し 歩き出す
ヘッドホンからは 救いの無い歌が流れ続けている