しばらく治まっていたけど、何となくまた溜息を吐くことが多くなった。
溜息が吐けるくらい、通常に戻って来たか。
奇妙な話だろ、溜息を吐いている自分に気付いて、それを「通常に戻って来た」と評する私自身。
この頃、喜怒哀楽が十分に機能していなかった。
感情はいつでも、単なるお荷物でしかない。
けれど、感情を持ち合わせていない人間は、人間であって人間でない。
からっぽの生き物だ。
溜息なんか吐いてみる時には、何か心に引っ掛かりを感じている状態で。
後悔や自責の念が、素直に流れていかず、心を突っつき回している。
それさえも、自分が感情を持った人間である証拠なんだ。
どれだけ悟った様な顔をしても、機械や人形のようには成れない。
感情があるから、人間は苦しむ。
感情がなければ、苦しむことはないが。
それはつまり、人間が人間であることから降りるということだ。
苦しむこともなければ、歓びを感じることもない。
心のねじが切れた状態で、終わってしまった世界にたった1人残されるよりは。
騒がしくも温かい、人間達がいる世界を私は選ぶ。