置き去り

知らない間に自分のいる街が、どんどん変わっていく。

見慣れた建物が取り壊されて。

しばらく見ないうちに、新しい建物が綺麗に出来上がっている。

それを見上げて私は、自分だけが取り残されているような気分になってしまう。

流れていく時間の中で、私1人だけが置き去りなのかと。

何をやっても、どこへ行っても、誰と会っても、虚しさだけが募るばかり。

太宰が入水直前に書き上げた『人間失格』の文章で。

“ただ、一さいは過ぎて行きます”という一節があるが。

結局は人生など、いくら頑張った所でどうこうなるものではなく。

人間に出来るのはただ、起こり得た全てを淡々と受け入れ、見つめるしかないのではないか・・・。

全ては、流れゆく一過性のものだ。

嬉しいことは、じきに消える。

苦しいことも、じきに消える。

四の五の言わずに、受け入れれば。

どんな感情も、いつかさようなら。