気まぐれな風

逃げ切れなくなったら、向き合うしかない。

というより、どこまで逃げても無意味。

逃げ場など、初めから存在しない。

その迫り来る恐怖と、真正面から対峙すればいい。

見つめれば見つめるほど、恐怖は力を失っていく。

砂粒と同じくらいのサイズになったら、プチンと潰せばいい。

背を向けて逃げ出そうとするから、怖れは巨大で強固なものになってしまう。

幻想を纏って、膨らんで見えるだけ。

初めから流れる風のように、何ら危害を加えてくる代物ではない。

いずこより吹いて、いずこへと去っていく。

すべては一過性の、気まぐれな風と同じ。