ある瞬間まで好きだったものが、ある瞬間にはどうでもよくなる。
ある瞬間とは、いつだろう。
遡っても、明確にいつとは判明しない。
ある瞬間が訪れるまでは、確かに好きだったのに。
ある瞬間さえ来なければ――――……。
だが、それを回避することは無理なのだろう。
成長期の子供が寝ている間に背が伸びるように、私たちも知らない間に成長する。
良くも悪くも、変わっていくのだし、それは誰にも止められない。
人が成長を止めるのは、死ぬ時だけだ。
その大切なものを握り締めるのではなく、そっと両の手で包み込むことで、その大切なものはいつでも飛び立っていける――――そして人はまた変わる。
変わることを怖れてはいけない。
そしてまた、忘れてはいけない。
空になった両手には、次の新しい何かが降り注ぐことを。