その日を摘む

伊坂幸太郎の『死神の浮力』を読了。

最近の伊坂作品は個人的に微妙すぎて、文庫を買っても途中で積んじゃうんだが、今回は割とスラスラ読めたかな。

伊坂作品は初期から浮世離れした作風が好きで、今でも好きなことは好きなんだけど、段々とその悪い意味で現実離れした世界観が受け付けなくなっていったんだよなぁ・・・フィクションにこんなこと言ったらおしまいだが、展開や台詞回しに無理がありすぎるんだよなぁ、最近のは特に。そんなこと起きる?このタイミングでそんなこと言う?ってのが多すぎる。話の転がし方が、ご都合主義というかね。

昔に読んだ『死神の精度』も正直そんなに面白かった記憶もないんだが、自分が病気になり、死というものがどんどん身近なものになってきたので、何となく今読んでおくべきなんじゃないかと思って、気が付いたら手に取っていた。

まぁ、本作もツッコミどころが多々あるとはいえ、今回は積まずに読めましたんで、客観的に見てもそこそこ面白いとは思います。ただし、話はめちゃくちゃ重いです。こんなに重いとは思わずに読んだので面食らったわ。

今回、サイコパスってのが一つのテーマなんだけど、25人に1人はサイコパスだっていうデータもあるみたいですね。作中で繰り返しその話が出てくるんだけどさ。

確か、LGBT(性的マイノリティ)も20人に1人くらい居るらしいんだけど、そう考えると学校のクラスに何らかの事情を抱えた人が1人2人はいたんだろうね。

私は別にサイコパスを擁護する訳じゃないんだけど、本当は彼らも被害者なんだよ。だって、普通の人が当たり前に持っているものが、生まれつき欠けているんだからさ。いわば、欠陥商品。あなたは、生まれつき片手のない人に、お前はどうして片手がないんだ?って言えるかい?言える訳ないよね。

性格が悪いで済むレベルじゃない常軌を逸した連中を、私も散々見てきた。見てきたというか、私はそいつらの被害者です。おかげで精神が崩壊しました。治る見込みはありません。でも、そういうゴミみたいな奴らも本当は被害者・・・そう思えってのは無理があるけどね。

でもまぁ、本当はみんな少なからず異常者なのかも知れないけどね。誰もがみんな、自分だけのルールと信念を抱えて生きているんだ。解り合えることの方が、遥かに少ないでしょう。

私たちは、みんな孤独な存在ですから。これは、仕方ないんです。

考え込んだって、何にもなりゃしない。

どんな苦しいことがあったって、少しでも楽しいことを探して生きましょうや。

私たちに出来ることは、その日を摘むことだけです。

昨日の花はもう散り、明日の花はまだ咲いていない。

今日にだけ咲く花を、ただ摘むことしか出来ないのだから。