通過儀礼

乾くるみの『イニシエーション・ラブ』を読了。

色んな人が色んなところで、この小説は凄い!騙された!って褒めるもんだから、名前だけはずっと気になっており、本屋にこの前寄ったらまた大仰な宣伝文句で文庫が並んでいたので、思わず買ってしまったのだ。

結論から言うと、この小説はとてもつまらないです。

評価の内訳は、文章力5点、基本のストーリー5点、ストーリーの仕掛け65点という感じになるだろうか・・・そう、この小説には仕掛けがある。ただの恋愛小説ではない。

読み進めるうちに少しずつ積み重なってきた違和感が、最後の数行で爆発して、「な・・・なんだと・・・!?」と驚愕するのである。

本当に、最後の数行は鳥肌が立った。もちろん、悪い意味で。何だか得体の知れない異形の物体を目にした時のような、えも言われぬ戦慄。思わず息を飲むというのは、こういう心理状況を指すのかも知れない。

だからまぁ、私は宣伝通りに騙されたのです。今日は嘘が混じる日だと知り、四月馬鹿に引っかからないように用心していたのに、最初から最後まで巧みな話術で納得してしまったのだ。その嘘話に。

何か、思ったよりも私褒めてますけど、最初に結論を述べた通り、この小説自体は凄くつまらないです。わざとレベルを落としているのか、これが作者の限界なのかは知らないし知る気もないが、とても擁護できるクオリティではない。学生が頑張って書いたケータイ小説と大差ない。

あくまで特筆すべき評価点は、巧みに張りめぐらされた仕掛けの部分だけです。

正直、何度も何度も苛立って読むのを止めようと思ったさ。だって、酷いんだもん。文体から、台詞回しから、展開から、何もかもが。

ただ、仕掛けがありますんで、話の構成を理解した上での再読は面白いと思いますよ。私は読み返さないけどね!!

個人のサイトで詳しく解説してあるのを読んで、なるほどなぁと感心しました・・・少しだけ。あくまでも、あくまでも、私はこの小説が好きではない。

だから、人には絶対にお勧めしません。このブログを読んで買ったけど、つまらなかったと言われても自己責任です。私は一切、お勧めしません。

どうしようもなく暇な時間があって、この本がもし10円で古本屋に売ってあったなら、そこでようやく購入を考え始めるレベル。悪いことは言わないから、時間があるなら夏目漱石の『坊っちゃん』でも読んで下さい。その方が100倍有意義です。

この小説は、ミステリーというより、間違い探し。

日曜の新聞に載っているような、何となく暇潰しに解く程度のものです。