笑いの話29

10代まではシリアスで重い作品も好きだったけど、二十歳を超えたあたりから気楽に愉しめるのしか触れなくなったな。面倒で辛くて過酷なのは実生活だけで充分だし、コミカルで笑えるものしか興味ない。暴力や残虐や理不尽を詰め込んだ程度で人間を表現した気になるな。よっぽど人を笑わせる方が難しい。

ユーモアはそれ単独でも言うことないけど、シリアスはユーモアを挟まないと見ちゃいられない。申し訳ないけど、ただただ苦痛な時間でしかない。

フィクションでの苦しいシーンってテンプレが決まり切ってるんだよな。大切な人との死別、離別、挫折、それらの克服でカタルシスもあるけど、ベースは今後も変わらないでしょ。太古の昔からそう。それに対してユーモアは無限の可能性がある。道端の石ころ一つからさえ面白さを見いだすのがユーモアだ。

枯れてしまった。失われてしまった。損なわれてしまった。だからって、枯れ木の前でおいおい泣いてそれが一体何になる。悲しい時、殊更に悲しいものを求めても苦しみが増すだけだ。

僕らのユーモアで、枯れ木に花を咲かせましょう。

人は笑うことで、誰かを笑わせることで、百花繚乱の花を咲かせることが出来るのです。