抜け殻

自分からこの世のすべてが抜けだしていくように思える。

そもそも自分という人間に何かが宿っていた時などあったのだろうか。運もなけりゃ才もない。何か特別なものを所有しているという感覚になったことがただの一度もない。

脱皮したから抜け殻になったのではない。最初から全くの殻であり、紛れもない空だったのだ。中身が存在しない。

あとは魂だけが抜け去っていくのを待つだけだろう。

そして何かがあったような気配だけが残り、それに気が付く人間もいないのだ。

人に忘れられた時に、人は本当に死ぬのだという。世の中には、生きながらにして死と同義の存在もいるのだ。

あなた方は精々、人々にいつまでも憶えられている人になるがいい。