この世界に残されたのは僕とタルカム・パウダーだけ

村上春樹糸井重里の『夢で会いましょう』を読了。

何でもありの、お二方によるショートショート

例によって読むのは二度目です。もう短編集、行けるとこまで行きましょう(?)

短編、再評価の流れきてるなぁ。少し前まで『ねじまき鳥クロニクル』を三部までこぎつけて(何しろ長い小説なのだ。読み返すのも一苦労)やっぱり村上春樹は長編に限るとか言ってたのになぁ。人生、何が起きるか解らない。これもぜんぶ『はじめての文学 村上春樹』のおかげだ。これで原点回帰と再発見があった。短編も面白いと改めて思うに至った訳だ。

それにしても、本書は遊びすぎだろう。文章でどこまで遊べるか試している感じ。村上春樹より糸井重里の方が遊んでる。MOTHERのテキストは好きだけど、本書はぶっちゃけ微妙かなぁ。やっぱり村上春樹の方が面白かった。

9割は書き出しですぐどっちが書いてるか解った。これだけ読み込んでくると、すぐに村上春樹だと直感で理解できる。文章の癖、物語の滑り出し、だいたいはすぐ気がつく。

しかし、単行本未収録のため全集を買おうとさえ思っていた『パン屋襲撃』が本書に収められている『パン』だとは知らなんだ。ショートショートにしては少し長いなとは思ったけど。いやね、『パン屋再襲撃』っていう短編集があるんですよ。再襲撃なら、最初の襲撃がいつだと思うでしょ。そんなもん作品になってないのかと思ったらあるんですねぇ。それが本書にあるんですねぇ。他の作品と比べても、やっぱり面白ですよ。短編にしては短く、ショートショートにしては長いけど。

この世界に残されたのは僕とタルカム・パウダーだけ、この文章にピンときた人は本書を読みましょう。村上春樹はセンスの共鳴ですから。ピンとこない人は一生ピンとこないのです。ピンとこないからといって何一つ不幸ではありません。世の中、そんなもんです。