残された時間

一年ぶりくらいに車を走らす。

とても一人じゃ乗れない。自分だけじゃ怖すぎる。

まだまだ教えて欲しいことが沢山あるのに。

車のことだけじゃない。人生についてでも、女についてでも。色んなことをもっと、もっと。

でも、時間が・・・。

初めから決まってることではあるけどさ。確かにそうだけどさ。

私と違って、あの人は自分の好きなように生きてきた。だから悔いは無いだろう。

私なんて我慢ばっかして生きてきた。今もだ。

もしかしたら、私の方が早く死んでいた可能性もあった。それも結構な確率で。

何で死ななかった?どうして生き残った?それはね、今でも解らない。

人生という迷路は、死というゴールを複雑に隠しているようにも思える。

でも死という存在は、常にひたりと寄り添ってるんだ。

気づけばいつだって、死が幸福の仮面を被って私に手を振る。「こっちは楽だぞ。早く楽になれよ」と囁く。

そんな言葉にはもう耳を貸さない。私は強いからね。

勝手に迷わせてもらうよ、人の道の中を。どう歩いても、辿り着く場所は同じなんだから。

最期の時まで楽しませてもらうよ、それが生まれてきたことの意味だから。

今生きている人達に、それぞれ残されている時間。

泣いて過ごすの?笑って過ごすの?