白に始まり、白で終わる

雨が雪に変わる瞬間を、初めて見たな。

もう大人に成ってしまうと、雪なんて邪魔なだけだ。

行きは雨だったので自転車で行ったが、雪に変わり吹雪いてきたので、帰りは自転車を置いて歩く事にする。

いつもの3倍近くも、時間が掛かるっていう・・・。

やっぱり不自由を感じるのは、自由を知っているからなんだなぁ。

悪天候時に悪路を進む事で、晴れの日に遮蔽物の無いアスファルトを自転車で走れるのが、いかに素晴らしいのかを理解するに至る。

普通は、普通じゃ無いんだって。

呼吸不全に成って初めて、今まで何の問題も無く呼吸が出来ていたのを理解し、何て幸せだったんだと痛感するように。

人間がどこまでいっても我儘なのは、現状の幸福に目を向けようとしないからだ。

・・・。

降り積もった雪が、どこまでも続く。

人が雪の上を歩くと、足跡が出来る。

幾人も幾人も、同じ道を通る事で、踏み均され道と成る。

遥かな昔、初めから道というものが存在していた訳では無い。

人が往来する事で初めて、道というものが出来上がっていく。

けれど雪は、出来上がった道を再び埋め尽くす。

また、人が歩く。

繰り返し、繰り返し。

私は雪を見ると、始まりと終わりを、同時に感じているような気分に成る。

そういえば以前に、そういう小説を書いた。

何かを見て、何かを感じる。

感じたものを、文章に起こす。

その文章を読んで、誰かが何かを感じる。

その誰かが、今度は――――

ああ、そうか。

生きていくって、繋がっていくって、そういう事なんだ。