グッド・バイ

太宰治の『グッド・バイ』を読了。

太宰が綴る、最後の短編集。

世間的には『人間失格』が最後の作品として認知されているんだろうが、絶筆の『グッド・バイ』が実質的には遺作ということになる。

13歳で初めて太宰の作品に触れてから、早12年・・・他の作品を全て読み終え、後はこの『グッド・バイ』を残すのみとなった。

表題作は凄く重苦しいのかと思ったが、寧ろ文調は躁であり、軽快なテンポで書き進められ、不思議なユーモアに溢れていた。

一線を越えたかのような、奇妙にさえ思える世界観。

太宰はこの境地に達して、世を去ったのか。

素直に文学として面白かった。

絶筆、即ち未完である。

これがまた、いい所で終わってるんだ。

夏目漱石の『明暗』もそうだが、文豪の作品は未完であっても後世の人間が出版して、現在の私達へ時を越えて届く。素晴らしいことだ。

今の文学とは次元が違い過ぎて、リアルに打ち震えるレベル。

こんな富士山級の作品を読んでしまったら、今の文学なんて読んでられないよ。

いつだったか余りの下らなさに、本を思いっ切り壁に叩き付けたことがあったな・・・これが文学?これが小説?ちゃんと最初から最後まで丁寧に読んで欲しかったら、お前が私に金を払え!!っていう話でね。

そもそも昔の人間と今の人間じゃ、人生経験が違い過ぎる。

太宰みたいな生き様そのものが文学なんて人間は、もう生まれて来ないだろう。

最後の作品を、深く噛み締めながら読み終えた。