悪意

俺が基本的に体を張ってまで助けたいと心から思えるのは子供だけ。子供には悪意がない。邪気がない。だから無邪気なんだ。ニコニコしている可愛い子供を見捨てられる訳がない。俺は別にいつ死んでもいい。どうでもいい大人にまで命をかける気は更々ないが、子供は別格。小学生くらいまでは俺が全力で守ってあげる。

なぜ大人を助ける気がないか。大人には悪意がある。基本的に善良な人間であったとしても必ず悪意を隠し持っている。自覚していようがいまいが、悪意を有さない大人などいる訳がない。俺は常に他人の悪意と対峙してきた。そして人間という存在のレベルの低さに辟易してきた。こんな奴らは生きるに値しない。いつ死んでもいい奴ら。だから俺がわざわざ助ける必要はない。子供と同じレベルの純粋で美しい心を持った善良な人間がこの世にもし存在するというのなら話は別だが。若菜さん、君はかなりレベルが高い。君だけは今現在別格だ。他の奴らは知らん。

悪意との戦い。もちろん悪意は俺の中にもある。いつ何時ダークサイドの虜になってもおかしくはない。俺もまた、いつ死んでも構わないレベルの人間に過ぎない。少しでも善良な人間であろうとはしているが、そもそも善良が何なのかよく解らなくなる。戦争で敵兵を100人も殺せば英雄だが、平時に100人も殺せば恐るべき猟奇殺人者。誰かや何かを守るには力がいる。奇麗事だけで人は守れない。国家は守れない。正義とは何なのか?正しさとは何なのか?

悪意。悪に意のままにされてはいけない。自分の頭で考えるんだ。自分の感性で決めるんだ。もしまた苦しむ人が傍にいた時、俺がどう動くべきか。

何度も何度も問いかける。俺はどう生きたいのか。どう成りたいのか。どう在るべきなのか。

現代の僕らに刀はありません。心の中にしか刀はない。いつ悪意と対峙することになるか解らない。躊躇うな。諦めるな。自分には何も出来ないなどと思うな。

強くなれ。

強くあれ。

強く生きろ。