いつか部屋のドアを開いて、若菜さんが入ってきてほしい。
俺の隣にすわって、いろんな話をしたい。
それくらい願ってはダメだろうか。
結婚はあきらめた。同棲もきびしいだろう。恋愛ですらなくてもいい。
ただ一週間に一度くらい、そんな時間がほしい。
俺はたった一人の運命の人だと思っているけど、相手は俺に無関心かもしれない。
なにもわからない。会えなくなってから数年も経っているんだし。
そもそも俺は若菜さんとまともに話したこともない。
でもこんなに少ない会った時間の中で、俺は不思議な縁を感じていた。
初めて会ったとき、光り輝いてみえたのを憶えている。
目を合わせたのは最初の一度きり。お互い不思議と目をあわさなくなった。
最初に目をあわせたとき、確かになにかが起きたのだろう。だからそのあと目をあわすことができなくなったのだ。
また会いたい。
どうかまた、もう一度だけも。
あの子に会えば、すべての謎が解けるはずなんだ。
会いにきて。
いつかそのドアを開いて。