雪の日と木曜日は

江戸時代の人口が100万人。

アクセス数が100万人。

江戸の全員が読むってこと?

はえー。

ミリオンセラーって江戸の全員が買うってことなんだね。

はえー。

江戸の人間すべてに受け入れられる文章を書く。

将軍から武士から商人から町人まで、あまねく。

上から下まで。

端から端まで。

一人残らず。

老若男女を問わず。

行き渡る俺の文章。

いやぁ……。

そんな日は永遠に来ないだろう。

そもそも100万人を前にして俺は何を書けばいいのか。

スタイルは変えないよ。

毎日、朝ドラの話をするよ。

雪の日と木曜日は、さようならも言わずに別れたあの子を思い出すって書くよ。

マジョリティに刺さるトレンドの記事なんて俺には書けないんだよ。

梅雨の日に降る雨が。

あの日の雪に思える。

静かに震える冬は。

何度も初夏の風を待ち侘びた。